最近はコーチングにまつわる、コミュニケーションの大切さやその本質をお伝えして行ってますが、
今までは「聴く」や「話す」などの、核となる行動についてのメカニズムをお話してきました。
そして今回は、「言う」についてお話したいと思います。
正しくは「言い方」についての教示です。
話すという行動の中にある、言うという行為ですが、
人は話をどのように操って相手に届けて行くのかを、この
「言う」という行為で実現しています。
けど、「言い方」と表現されるくらいに、言葉を届けたり話を操ったりすることが、
人は決して上手ではありません。
だから、世の中には必ず「敵」が存在してしまいます。
この言い方一つで、人は敵となったり、逆に言えば味方になってくれたりと、
人生さえ分けるくらいの効果を生み出すのですが、
決して上手ではないから、よくない方へ力が向いてしまうことがよくあります。
そんな「言う」という行為にも、ちゃんと正しい取り扱い方がありまして、
それによって自分に色んな味方をつけて行けるようになるので、
今回はその方法を交えながら、解説して行きたいと思います。
言い方が違うと、その意味は同じなのに捉え方が180°違ってくるのはなぜ?

あなたがAさんとBさんに対して何かを説明した時、
それぞれからこのような言葉が返ってきたとします。

それは分かってます。

それは重々承知です。
この2つの言い方、どちらの方が印象がいいですか?
おそらく、「それは分かってます。」と言われるより、
「それは重々承知です。」と言われた方が、
印象がいいのではないかと思います。
物腰柔らかい感じがしますもんね。
「分かってます」だと、聞いた方は少しムッと来るのではないでしょうか。
「重々承知です」だと、聞いてもそんなにムッと来ないのではないかと思います。
ハッキリと告げられた印象がある「分かってます」では、
相手に向けて、上からの気持ちで言ったように感じられますし、
「私は理解しているのだから、あなたも分かってくれよ。」というニュアンスで
伝えたのだろうと捉えます。
少し遠回しに告げている「重々承知です」では、
相手に打撃を与えまいとしている気持ちが表れていて、
「私はちゃんと理解できているから大丈夫、伝わっているよ。」という雰囲気があり、
あくまでも、自分の認識度合いだけを伝えたのだろうと感じられます。
これらを比べてみると、どんな要素があってその違いが出ているのか分かりますか?
言っている言葉の中には一言も出て来てないですが、
実はこれ、「あなたは」「わたしは」の方向性・対象性が表れているため、
全く別の印象で伝わっていたのです。
相手を指して言ったように聞こえるのか、
自分のことを伝えたように聞こえるのか、
が違ったわけです。
言い方によって伝わり方が違っていた原因は、
この中に隠されていた「あなたは・わたしは」の、誰宛てなのかという要素だったんですね。
Iメッセージ・Youメッセージ・Weメッセージを使い分ける大切さ

このように言葉は、同じ意味合いでも、向き・宛てが違うことがあり、
たったそれだけで、相手の反応が変わったり、信頼関係まで変わっていくことに繋がっていきます。
「言い方ってものがある」という言葉が存在するのも、言う=伝えるための行為がため、
伝わり方が大きく違ってきて、その影響も大きいということからです。
ホント、同じ言葉のはずなのに、言葉を受け取った先で激変するとなれば、
言い方=伝え方のニュアンス・技法は、非常に大切ということになりますよね。
そこで一つヒントにしてもらいたいのが、上記で伝えた、「誰宛てなのか」を意識して伝えることです。
実は相手にメッセージを伝える時には、3つの立場が存在します。
それは、「I」「You」「We」の3つです。
ちょっとここからは、より分かりやすくするため、順番を並べ替えて解説していきますね。
Youメッセージ
言葉の通り、「あなたは」で伝える言葉です。
前述でお伝えした通り、相手に指すように届けるメッセージとなります。
これ、我々がいつも何気なく使っている言い方ではあるのですが、
Youでメッセージを伝えると、自分の見方から相手を評価しているというニュアンスになるので、
上からになってしまうのです。
なので、目上の人に対しては、自然と使わないのではないでしょうか?
こう考えると、人は無意識に言葉の向きを切り替えてメッセージを使っていることが分かると思います。
だからこそ、ちゃんと意識して言い方を使い分ける必要があるということです。
Iメッセージ
代わってこちらは、「わたしは」で伝える言葉です。
自分の状態や気持ちを、相手に直接ぶつける感じではなく、ただ公開する感じで出すメッセージです。
Iでメッセージを伝えると、相手に「捉え方は自由だよ。あくまでも参考までに。」というニュアンスで伝えることができます。
なので、感想を述べているような伝わり方になります。
実は、相手を評価する際では、Iメッセージで届けると、
言い争いになりづらいメリットがあるのです。
もちろん、目線は上からにならず、真横からになりますので、
こちらの方が抵抗なく、相手はメッセージ内容を受け取ってくれて、
そして考えてくれるようになります。
私たちは、「あなたは」という性質が入った言葉でメッセージを伝えれば、相手を動かせると思いがちですが、
それは本当は、自分を優位に立たせるための、自分に向けて発していただけの言葉だったんです。
よって、Youメッセージよりも、Iメッセージで伝えることで、
「私はこう思う」と言いとどめることになり、それにより相手に直接言葉が刺さらず、
相手は打ち返せないため、逆に気にさせ色々と考えさせることに繋げられるのです。
目上の人に自分の意見を伝える際でも、このIメッセージで伝えていませんか?
こちらも、無意識にそうなっているのではないかと思います。
Weメッセージ
最後に「私たちは」で伝える言葉です。
単人称ではなく、3人称以上の複人称であることを伝え、みんながそう思っている的に伝えるメッセージです。
このWeで伝えるメッセージには、凄い力がありまして、
人は面白いもので、みんなから言われていると感じることに弱いです。
だからといって、集団でその人を総がかりにいじめるように言葉を使ってはいけませんが、
その人をみんなで応援するって場合だと、一人ではない感じがして、心から力を湧かせられるようにできます。
いわゆる、相手との距離がグッと近くなるんですね。
仮にその場に沢山の人がいなくても、チームで動いている物事や、組織の中で活動している場面では、
マンツーマンでもこのWeメッセージで伝えていくことができます。
これこそ、意識して上手く使って行けるようになれば、
距離を縮めて行けるため、相手がメッセージを受け取った後の行動を、より効果的に変えられるのです。
人をその気にさせたい時は、「私たちは」が一番です。
言い方を操れるようになることで、人はいくらでも味方になってくれる

こう考えると、発言する前に一度立ち止まって、これから発しようと思う言葉に
「私は」「あなたは」「私たちは」のどれが付くのか、付けるべきかを想像してから
発するようにしてみて欲しいと思います。
例え自分は悪気が無かったとしても、言われた方は言い方そのままを受け取るものですから。
前提として、「あなたは」の要素が含まれる言い方に関しては、ここぞという時にだけ使うようにしたらいいでしょう。
例えば、元々関係が深く心が充分通い合っている人との間で、どうしても訴求しないといけないような重要性のある物事の時に、
ショックを与えて動かす必要がある場合などです。
でも、Youメッセージが日常によく使われているものだとなれば、
Youメッセージを多用している人は、どうしてもその人との距離がおかれてしまうということ前提で
使う意識を持った方がいいかもしれません。
なので、慣れなくて不器用に硬くなってしまうとしても、
意識をしてでもIメッセージを使うよう心掛けてみてください。
使って行く度に、相手の反応や返ってくる言葉が変わってくることを実感していけると思います。
言い方を変えていくことは、矯正行動となるので、多少意識と努力が必要となりますが、
その分、人間関係まで変わってくるほどの凄い効果を生み出せるのであれば、是非矯正する価値があると思います。
そして、言い方を操れるようになるだけで、自分の味方がどんどん増えてきます。
更に人は自分の味方に対しては益々、IやWeメッセージで自然と会話をしていく性質があるので、
良い事がどんどんと続いていくことに繋げられるのです。
まとめ:貴重な発言を、言い方一つで真逆に捉えられないようにしよう

どうでしたか?
「言い方」にはこんなにも力があって、顕著に効果が表れるものだということがお分かりいただけたでしょうか?
同じ意味なのに、言い方が違っていると、伝わり方は反対向きになってしまうということでしたが、
発言には必ず、誰に向けてのメッセージなのかという性質があるということからでしたね。
そして、言葉を発する前に少し立ち止まって、これから発する言葉は誰宛となるのかを意識してみることが大切だと言うことでした。
その時には、
- 「わたしは」のIメッセージ
- 「あなたは」のYouメッセージ
- 「私たちは」のWeメッセージ
この3つの立場を思い浮かべながら言い方を選んでみてください。
これを意識しながら会話をしていくだけで、自分自身の言葉の力や、
周りの人からの反応やコミュニケーションさえ、より良い方向へと変わって行きます。
あなたのどんな一言にも、大切な想いが乗って相手へ届けられていることになります。
それが、言い方一つで誤解されてしまっては、想いがこもっていたあなたの貴重な一言は、
無残にも相手を引っ搔いただけのもので終わるのです。
でも、しっかりと想いがあるから、その言い方が直球になってしまうのも事実です。
むしろ、想いが込めれているのだから、後はこのメッセージの向きをちゃんと操縦できるようになれば、
その言葉が相手にしっかりと届いた時には、凄い効果を生むことになるでしょう。
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