連載形式でお伝えしているコーチングのことですが、
どのようなものなのか、皆さんも少しずつ理解されて来ているのではないかと思います。
このように知ってみると、今まで体験してきた物事の中で
もう既に触れて来ていたんだなって思ったかも知れません。
実はコーチングって、そのくらい身近にあることだったんです。
それでもまだまだあまり知られていないこのコーチングが
どんな場面でどんな効果を与えては有効活用されているのかを、
今回では、競技の世界で実際にあった一つの事例で
コーチングの凄さを伝えてみたいと思います。
その世界の専門コーチよりも成果を出した、この外部コーチが取った指導方法とは

ある日、大会本番が近くなった陸上競技の選手の元へ、
水泳競技のインストラクターをしているコーチがやってきました。
このコーチは、選手に優秀な結果を出させることに長けていると有名だったため、
伸び悩んでいたこの陸上競技の選手の、専属コーチを任されることになったようです。
もちろん、この陸上競技の世界に対しての専門的な技術は積んできていません。
結果、なんとこのコーチから教わった陸上競技の選手は、想像以上の結果を出すことができたようでした。
実はこのコーチは、陸上競技はできませんが、教えるのが上手かったのです。
そして実際には技術のない素人だったため、コーチはスキルやノウハウなど、何も教えていません。
正しくは、質問を上手に使うことができたため、選手自身に色々と気づかせたり、
まだまだ内に眠っていた潜在的な能力を引き出したりして、
選手本人自らが今までにしてこなかった、更なる動きをするきっかけを作って行っただけだったんです。
そう、コーチングをしたんですね。
この水泳競技のコーチは、「もっとフォームを見直してタイムを伸ばすことに意識しよう」とは指導せず、
「優勝をしたら一番に誰に報告したい?」とか、「そのフォームでの滑走には、どこにウエイトを感じる?」とか、
とにかく色んな角度から色んな質問をして、選手の気持ちや意識を聴くことを強く行っていたのです。
選手が勝利を手にした瞬間のそのヴィジョンなどを、何度も何度もリマインドを重ねていきながらイメージを強くさせ、
選手本人が目標に向かって「やる気」がみなぎるように常に常に仕向けて行き、
引っ張らずに押して、選手本人自らの行動によって達成していくように仕掛けたのです。
当然、今までもやる気や意識がなかったわけではありません。
結論、選手自身の視点が変わったことで視野が広がり、それにより更なる結果を生み出すことができたのです。
元々のコーチには、陸上競技の技術はあっても、伝える技術がなかった

ここで一つ思うのは、なぜ、本来この分野において専門的な技術を持ち合わせていたはずの
元々の陸上競技のコーチでは、選手の成績を上手く伸ばせなかったのでしょうか?
今回のケースでは、どうやらこのコーチが指導の際に伝えていた伝え方では、
選手がそれをイメージすることが上手くできなくて、
伝えられることと自身がイメージすることとの、その差に苦しんでいたことが原因のようでした。
いくら専門的な技術を持ったその世界の有段者であっても、
人に物事を正しく伝える技術が無かったことから、
ココの差を埋めることが出来なかったのです。
そして、このコーチはそのことすら気づいていなかったため、
直球な伝え方で選手を指導し続けていたことで、誤解が生じてしまっていたということでした。
このように、教える側では当然だと思って伝えたとしても、
教わる側からしたら、理解に苦しんでしまうことがよくあるのです。
「教える」と「伝える」は、全く別物

選手を本当に目標達成させるために、コーチングでは
その分野にとって必要な知識や技術をこちらから教えること重視しません。
確かに、それらもとても大切なことなので、全く教えないのもいかがなものですが、
それをコーチングでは、選手とコーチが一緒になってそれらを考えて見つけ出し、
自ら気づいて発見していきながら、知識や技術を身につけて行く流れをとります。
一緒に知識や技術の「棚卸」をし、それをどうしたら手に入れられるのか、
どうすれば身につけることができるのかを具体的にしていき、選手の自覚へと変えて行くために
色々な考え方や物の見方を伝える方法を取るのです。
コーチは、教えるのではないやり方で、能力を備えさせるので、
ティーチングでなはく、コーチングなんです。
まとめ:指導者に必要な技術は、会話の技術の方だった

というわけで、過去の実績とコーチングの技量は、イコールではありません。
名選手が、必ずしもいい選手を育てるというわけではないのです。
前任の陸上競技のコーチは、ティーチングをしていて、
後任の水泳競技のコーチは、コーチングをしていたのです。
講師の使用したスキルは、それぞれが全く別物だったということですね。
結局、名選手が名コーチになると限らないのは、
「会話」が作り出せないことが大半の原因です。
なので、コーチは正しい会話の技術も身につけないと、
本当の結果を出すには難しいことでしょう。
選手の話をしっかりと聞いてあげられなかったら、このようになってしまうんですね。
会社でも同じことが言えますが、大抵の場合、上司が部下よりも多く話してしまいます。
それが原因で、下が育たなかったり、離職率が上がったり、
今のゆとり世代と言われてしまう新生の社員達は、ゆとりだからで片づけられては
たまったもんじゃない気持ちでいるのではないでしょうか。
彼等の今の状態や気持ち、どんな動機からその行動を起こしているのかを
上司自ら機会を失う行動を取っているものなのです。
なので、どれだけ心から必要性を伝えたり修正を指導したとしても、
彼等の行動を根本から変えて挽回させることまではできないのです。
人を育てたり、共に伸びて行くために大切なのは、
教えることより、伝えること。
すなわち、言うことではなく、聴くことだったんです。
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